− わたしのしごと − 中島久美子(幼児教育家)

By 2017.12.03PEOPLE

中島さんが代表を務める森のようちえんピッコロは、北杜市須玉町の津金地区の自然豊かな場所にあります。関わる大人が全員で子どもたちがよりよく育つ場を作ろうと、保育士と保護者による共同運営で成り立っています。ピッコロの子どもたちは、1日のほとんどを野外で過ごします。山や森、小川などで四季を通して様々な命に触れている子どもたち。



中島さんは、高校生の頃に家庭科の時間で訪れた幼稚園で見た子どもたちの活き活きとする姿や言動に感動して、保育を一生の仕事にしようと決めたといいます。東京や横浜の保育園・幼稚園で働きいろいろな保育のやり方を見てきて、そこで感じた『時間に追われる保育』ではなく、一人一人の子どもと向き合った保育をすることが必要だとずっと考えていました。一度保育の仕事から離れることもありましたが、縁あって暮らすようになった山梨で、ある親御さんから子どもを預けたいという要望を受けました。

草や虫など、生き物が身近にいる自然環境の中で保育をすることは今までと全く違う感覚だったといいます。2007年に小さく始まったピッコロは年を追うごとに預かる子どもたちが増え、今では約30人の子どもたちが通うようになりました。

「保育で大事にしているのは、子どもたちを信じて見守り、待つことです。子どもたちが自分で気付いて、自分で判断して、自分で変われるようになってほしいから。ケンカや何か問題があっても、解決方法は大人が指し示すのではなく子どもたちが自分たちで考えます。その分、一つのことが解決するまですごく時間がかかります。子どもは未熟ではありません。長年保育をしていて思うのですが、子どもたちの考える力、友だちを想う心は、わたしたち大人の想像をはるかにこえています。ここで育った子どもたちには、人に左右されない人間になってほしいと思っているんです。それは人と一緒に何かをできないということではなく、協調性を持ちながらも自分の芯を持って生きること。長い人生の中で、自分を生きるということはそういうことだと思うんですよね。絶対にこの保育がよいかどうか、正解はすぐには出ないのですが、だからこそ信じて待っています」

 

子どもを信じて待つということは、言葉で表す以上に体現することは難しい。そこには、大人も育たないと子どもも育たないということも含まれます。自然に対して畏敬の念、感謝の気持ちを持ちながら、森の神さまに見守られながら、子どもたちは自然の中で心を大きく揺らしながら成長していきます。




森のようちえんピッコロ
http://mori-piccolo.jp
piccoro-koho@live.jp

BEEK

Author BEEK

やまなしの人や暮らしを伝えるフリーマガジンBEEKです。日々の暮らしの中から、やまなしの“いま”を伝えます。

More posts by BEEK