ストリートフード店「Parkside Parlor IRU」(2022.09閉店)

By 2021.08.12SHOP

韮崎中央公園のとなりにある『Parkside Parlor IRU』は、おいしいソフトクリームや世界各国のストリートフードが味わえるお店です。廃墟となっていたガソリンスタンドをリノベーションし、2020年5月にオープンしたIRUが目指しているのは、 “ごきげん”を自分たちでつくりだすこと 。メニューにソフトクリームがあるのも、 “誰もが思わずごきげんになってしまう食べ物だから” だそうで、そんな豊かなアイデアがたくさん詰まったこのお店にいると、不思議と笑顔になってしまうんです。

この記事では、IRUを設立した合同会社Hudanのメンバーと友人であるBEEKスタッフ窪田が、『IRUの魅力』とOPEN前から側で見てきた『IRUができるまでの物語』をお届けします。

IRUでは、メキシコ料理のタコス、イタリア料理ランプレドットのサンド、台湾料理の魯肉飯など、世界各国の料理をたのしむことができます。手焼きのトルティーヤに月替りの具材を合わせたタコスは、お店の一押しメニュー。ライムをぎゅっと絞って頬張ると、爽やかな酸味と肉のうま味が口の中に広がります。

“ごきげん”の代名詞として提供されているIRUソフトは、ワッフルコーンをお店で手焼きし、季節ごとに使用するミルクを変えるというこだわりっぷり。今年の夏は、神奈川県で山地酪農をしている「薫る野牧場」のミックスを使用していて、すっきり爽やかなソフトクリームが味わえます。

IRUはBEEKの事務所があるアメリカヤからも車で5分程度なので、ランチを食べたり来客を案内したりすることも。土屋編集長のおすすめは「タコライス」だそうなので、何を頼むか迷ったらぜひ食べてみてください。

料理長を務めているのは、Hudanのメンバーの一人である清水元気くんの弟の亮介くん。東京で働いていたイタリアンレストランを辞めて韮崎にUターンし、料理長としてIRUに加わりました。実は清水兄弟は穴山の自然派カフェ「おちゃのじかん」の息子たち。お店の方向性は違えど、地域で採れた野菜にこだわり、ヴィーガンフードなども用意しているところに両親からの影響が感じられます。

外観から見たイメージよりも広々とした店内は、アメリカのダイナーを少しモダンにしたような雰囲気。韮崎中央公園の隣(パークサイド)という立地を活かし、親子に来てもらいやすい空間づくりをしているところも特徴で、授乳室やおむつ替えの台があるのもお母さんたちにとってはうれしいポイントです。外のスペースには、自由に絵を描ける大きな黒板やトランポリン、けん玉、キックボードなどの遊び道具も充実しているので、大人がトークに夢中になっている間、子どもたちは思いっきり身体を動かして遊ぶことができます。

お店を運営している「合同会社Hudan」のメンバーは、昨年のオープン時点でまだ全員が20代でした。

「あのガソリンスタンドかっこいい」と初めに言い出したのは、NPO法人河原部社の代表理事を務める西田遙くん。そこに3人のメンバーが賛同し、計4人でHudanを会社化し、IRUを立ち上げました。それぞれ他の仕事や学校がある中で、全員が副業で関わるという新しいスタイルもこの組織の特徴の一つでした。

オープン前の2019年8月に、友人向けに開催された小さなイベントに参加して、まだ電気すらも通っていなかった廃ガソリンスタンドの建物を見学したことがあります。当時、建物内はボロボロの状態であり、彼らに飲食店経営の経験がないことも知っていたので、「ここがどうなったら嬉しいか」とアイデアを求められても、正直なところいまいち想像がつきませんでした。

しかしその9ヶ月後には、メニュー豊富なストリートフード店としてオープン。初めてお店を訪れた時には空間のあまりの変化に驚きが隠せませんでした。自分たちでお店の設計やロゴやメニュー表のデザインまでしていて、「みんなの力を合わせたらこんな風に形にすることができるんだ」と同世代が持つ底力と可能性の大きさを感じました。

楽しそうな予感がしたら友人同士で会社を立ち上げて、未経験でも飲食店経営を始めてみる。全員が副業で関わるという新しいスタイルを、恐れることなく試してみる。「新しい働き方」と口で言うのは簡単ですが、借入をして人を雇ってお店を運営していくのはもちろんとても大変なこと。それを実感しながらヒーヒー言っている彼らの話を聞くこともありますが、それでも彼らは信頼し合っている仲間同士で作戦会議を繰り返し、いつも新しいアイデアを実践していて、なんだかすごく楽しそうなんです。

「IRU」という店名には、“スタッフにとっても、お客さんにとっても「じぶんたちのイルところ」になってほしい”という思いが込められているそう。「じぶんたちのいるところをじぶんたちでつくっていく」という彼らの覚悟を聞いたとき、誰もがそうであったらまちは変わっていくのかなと感じました。自分たちが主体的に動いたら、どんな土地にいても“ごきげん”はつくりだせるのかもしれません。

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