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通っていた高校には学校から100km以上を二日間かけて歩くウォークラリーという行事があった。夕方暗くなるまで歩き、どこかの学校の体育館で雑魚寝して、翌日また歩くというなかなか過酷な行事だった。毎年コースは変わるのだが、一年生の時は、マメのできた足を引きずりながら800mちょっとの百名山を越える(歩くのは登山道ではなく車道)、トータル130kmの道のりだった。学校はこの行事の為に、車のライトに反射しやすいようにとクリーム色のジャージを作ったくらい気合いが入っていた。
運動嫌い、歩くの嫌い、団体行動苦手だった私には三重苦。なんとか歩き切ったものの、翌日は全身筋肉痛でソファから一歩も動けず、母を召使いのように使い丸一日をそこで過ごし、トイレだけはどうしようもないので、文字通り床を這いつくばって行った。二年生の時は友達と結託して33km地点でもうダメですと言って途中棄権。三年生の時はいよいよサボることにした。高校の真裏に家があった私は、みんなが出発する様子を背後に感じながら後ろめたさでいっぱいだった。何の訴えもないサボタージュだった。
山を登っている時、どうしてもこの二年目と三年目が頭を霞む。歩くということに何の魅力があるのか分からなかった当時の自分。あれを歩き切ったら立派な大人になれたのか、そんな事を考えたり、考えなかったり。
あれから30年の月日が経ち、誰に頼まれるでもないのに自ら歩く自分がいる。国内外のロングトレイルに魅力を感じるし、黙々と歩くという行為の素晴らしさにすっかり魅了されている。登山はキツそうでやりたくないとよく言われる。私はその人たちの気持ちが嫌というほど分かる。