ハイライフ八ヶ岳 2020

By 2020.09.30DAYS

今年はオリンピックや新型コロナウイルスの影響で9/12-13に延期になって開催された「ハイライフ八ヶ岳」。
絶景音楽フェスという異名を持つ理由は、標高がメインステージで1600m、リフトを使うと1900mにもなる標高の高さゆえ。

北杜市のサンメドウズというスキー場が会場です。今年で3回目ですが、初年度から主催のアースガーデンさんが地元との協力体制をイチから作りあげてきました。

今年は音楽フェスが不特定多数の人が大勢集まるということで全国規模で中止になっていました。
ハイライフ八ヶ岳は開催を夏から秋に延期することで、コロナウイルスに対して十分な検証や対策の時間をとり、with コロナ時代のフェスの形を模索して開催までこぎつけました。もちろんこの時期に開催するというハードルの高さ、開催することでの対策や準備や安心感の提供など、さまざまな苦労は容易に想像できます。
BEEKでも初年度からアースガーデンの南兵衛さんや地元で作られた実行委員会に声をかけていただき、このフェスができる過程を見させてもらっていました。ただ、毎年自分が出店している他県の別のイベントと日にちがかぶっていたり、日々の仕事量で精一杯で、実行委員会に直接関わることはできていませんでした。
今年は開催日が延期になり、満を持して参加することができました。そのリポートというか、実際にハイライフを体験して感じたことを記しておこうと思います。お客さん目線で参加者として、一人の音楽好きとしての感想です。

今年のハイライフ八ヶ岳は9/12-13の土日の2日間。土曜日の最後のトークステージの枠で話すことを頼まれたので、土曜日の夕方からぼくのハイライフが始まりました。
久しぶりに訪れた会場のサンメドウズ清里。施設に入ると、マスク着用やアルコール消毒を促すアナウンスがしっかりされています。その後ライブ会場に行っても気づくのですが、スタッフが巡回していて密を防ぐ注意喚起をおこなっていたり、ステージ前に椅子を並べることで人が集中することを防いだり、会場の移動には検温も実施するなど徹底した対策が講じられていました。
公式ホームページでも事前に「コロナ時代のフェスのお作法」として、とても詳細に来場時の対策をお客さんに促していました。イラストがゆるくて可愛い。とても大事で真剣に伝えたいところに愛嬌があるって好きだなぁ。


トークブースでのトークテーマは「ラーメンと餃子から紐解くローカルの魅力」という、いったいなんでこの場でラーメンと餃子? とツッコミしか入らない話題を設定しました。対談相手は、富士吉田で教育NPOを運営する斎藤和馬くん。彼とは仕事仲間でもあって、高校生に向けた授業でデザインや編集の役割を話す場を設けてもらったり、商品開発のお手伝いなんかをしていました。
そんな斎藤くんが愛してやまないラーメンという切り口と、ぼくのライフなスタイルに組み込まれている日々の餃子愛を通して、山梨やローカルの魅力を語りたいと考えてこのテーマになりました。
真面目にラーメンと餃子愛を公の場で声高に話せる日が来るなんて。
ローカルな食は、地域に根付く生活文化に紐づいてその土地ならではの進化を遂げます。吉田のうどんはまさにその実例(ラーメンでも餃子でもないけどw)。
斎藤くんとの話題で出てきた諏訪の「しるし」というラーメン屋にはぼくもすぐ駆け込みました。
終わりなき旅を聴きながらすするラーメンは格別です。

土曜日のライブはトークの前にライブをしていたキセルしか聞けませんでした。
メインステージエリアに足を踏み入れた瞬間に流れた「ギンヤンマ」。日が落ちた野外で、大勢のお客さんと自分の耳に音と歌が生で響いてるという事実が、フェスの真っ只中にいるという実感を与えてくれました。その一瞬で感じた感情をここで言葉にあらわす語彙がないことが悔やまれます。

土曜日はそのままキャンプインして日曜日は友人たちと合流。
イベント始まる頃には絶景が! と思いきや、天気予報は少しぐずつきもはや霧の中。でも1日通して雨は降らず、逆に日が照りつけず過ごしやすい気候でした。ライブやトークを聞く合間に、山梨の馴染みのお店にも寄りました。甲府のNAPのホットドッグは大人気。お昼の時間を待たずに売り切れていました。開店と同時に並んでよかったー。美味しそうすぎて写真撮ることも忘れてむしゃぶりつく。美味しいものはフェスの醍醐味。北杜市のROCKもカレーとビールで出店。どちらもハイライフにかかせないと言わんばかりに人気でした。

甲府のアウトドアショップSUNDAYも出店。
「この自然と音楽の雰囲気が最高にいいよねー」とハッピーオーラ全開で店主の石川さんがもてなしてくれます。この日に間に合わせてぼくもお手伝いして作った「HEYDAY」TシャツもGohempのTシャツボディでフェスにぴったり。買ってその場で着たらみんなお揃いになってましたけど。


お次はロープウェイに乗って標高1600mから1900mまでUP。標高が300m上がった清里テラスでは晴れていたら絶景が見えるんです。まあ結局のところ霧や雲で見えなかったのですが。
ということでせっかくなので公式の動画でこの周辺環境を見て見てください。周りが森、山、大自然!
大パノラマのこの景色を音楽フェスで見れるのは貴重かも。

山に登って一番意識するのは空気なんです。肌に触れているのはいつも空気。空気が冷たい、空気が気持ちいいなんて言葉、高所でしか出てこないと思うんですよね。ハイライフは音楽ももちろんだけど、自然をとても感じられるフェス。どこにもない、ここにしかない空気感があるフェスなんだと来てみて実感しました。

パソコンの画面やSNSだけでは、ほんとうの大事なことは伝わらない。コロナ禍で移動が制限されることもあったし、音楽フェスの開催の可否についても賛否はあるかもしれないけど、ハイライフは全てに対して答えを出していました。その答えを感じられるかは、受け手側のぼくらの努力も必要なんですよね。


日が落ちる前の時間帯、ライブでは最高の盛り上がりを見せたクラムボン。ひさしぶりのライブとあって、とても意気揚々と音を鳴らしている姿が見ているこちらもグッときました。1曲目の「Folklore」からのラストに「タイムライン」で締めるところが、泣かせる。ライブ途中でmitoさんが「ありがとう。救われました」と言ってくれたのですが、「音楽に救われているのはぼくらも一緒ですよ」って心の中でつぶやきアンサーしました。クラムボンの演奏中、あれだけ曇ばかりだった空が少し開け青空が顔を出す瞬間がありました。空を眺めながら「波よせて」を聞く。

日が落ちて2日目の大トリはROVO。
まさか山梨で、まさか八ヶ岳南麓でROVOが生で聴ける日が来るなんて、コロナウイルスがこんなに世界に広がるのと同じくらい想像できませんでした。
彼らが90年代後半に活動を始めた頃から、ダブルドラムのビートと圧倒的な宇宙的な人力トランスに魅了されまくっていました。音を聞いて踊るという太古の昔から人間のDNAに組み込まれた単純な生を呼び覚まさせてくれたバンドがROVOでした。東京にいる頃は毎年MDTフェスにも通ったなぁー。

ライブは数ヶ月前にリリースされたコロナ禍を経て作られた渾身のセルフタイトルがついた「ROVO」からの曲も多かったです。ちなみにアルバムのジャケのビジュアルを、結成当時からずっとROVOでVJしていた迫田悠さんがデザインしているのが個人的に胸熱なんです。今回のライブでのVJは我らがmitchel(みっちぇ)なのも胸熱。ウェブやVJでの音楽交流幅広いみっちぇの今までの活動がハイライフにもとてもとても活かされています。いつか100%みっちぇ音楽祭も夢見ているんだよ。

コロナ時代のフェス、隣との距離をとっているので前の方でがむしゃらに踊っても誰の迷惑にもならなそうでした。
自然の中で大きな音で音楽を浴びるフェスの開放感をひさしぶりに味わいました。
音楽は不要不急で語られるよりも、食べる、風呂に入る、音楽を聞く、寝る、などの人間の日々の暮らしのライフラインのひとつであると、ぼくは勝手に信じています。
ライブが終わって空を仰ぐと、まだ雲がたちこめていたのか星の輝きは見えませんでした。
余韻は耳の中で鳴り止まず、しばらく誰もいなくなったステージを眺めていました。
帰り道、前を歩いていた県外からのお客さんなのか「ゴミも落ちてないし、すごく大きなフェスじゃないけど気持ちいいよね」と話しているのが小耳に入りました。
気持ちいいって単純な言葉に集約されたけど、そこに全てがありそうと思ったのです。
人との距離、自然との付き合い、運営のしかた、ミュージシャン、ソーシャルディスタンス、どれもこれもが気持ちよいフェスでした。
ハイライフ2020は、コロナ禍の中で音楽フェスティバルとしての一つのスタイルを作りました。その火種が色々な地域に波及してそれぞれのスタイルが成り立つことを、主催のアースガーデンさんは考えていたのかもしれません(違ったいたらごめんなさい)。
すべては音楽の灯火を消さないということ。受け手側のぼくらも一緒になって、これからのフェスの時代を作り上げるべきなんだと思います。

ありがとうハイライフ。また、来年。
BEEK

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