まちのジャズ文化の拠点「JAZZ HOUSE NOW」

By 2019.10.29SHOP, 未分類

富士吉田の西裏というスナックや飲み屋がひしめき合うエリアに、「伝説のJazz Bar」と呼ばれるお店があります。
1970年にオープンした「JAZZ HOUSE NOW」は、60年代後半に日本に入ってきたジャズを思いっきり楽しめる、当時の吉田の大人たちの憩いの場でした。まだレコードが高価だった時代、新しい曲を聴くにはジャズ喫茶を訪れて真剣に耳を傾けるというのが、当時のジャズの楽しみ方。吉田のまちの大人たちは足しげくNOWに通っては、ウイスキーを飲み、スピーカーから聴こえてくる良質なジャズの音色に酔いしれていたのです。
まちなかでジャズライブをする『西裏ジャズ』の取り組みも、NOWの常連さんたちによって誕生しました。


そんな吉田のジャズ文化の中心的存在であるNOWのスピーカーからは、今でも良音良質なジャズが流れ続けています。カウンターに立ち約3000枚のレコードの中からその日のお客さんの雰囲気に合う一枚をそっと抜き出しターンテーブルに置くのは、2代目店主を務める希衣子さん。当時のマスターの娘さんです。子どもの頃からジャズのある環境で生まれ育った希衣子さんにとってジャズは子守唄のように落ち着く音楽なのだそう。ジャズに詳しくなくても希衣子さんと話をすれば、様々な音楽に出会うことができます。


この日は店内に入った瞬間、ピアノの音色が耳に心地よく流れ込んできて、時間が少しゆっくり流れ始めたような、不思議な感覚になりました。音の質を担うのは、2000年に譲り受けたというパイオニア製TADのスピーカーです。希衣子さん以上に音にこだわりを持つお客さんたちがスピーカーの調子を常に気にかけ、不具合があればすぐに指摘してくれるので、お客さんの声を参考にしながらずっとメンテナンスして大事に使い続けているそうです。
そんなお客さんたちに大切に想われているNOWのカウンター席は50〜60代の常連さんで賑わっていることが多いですが、最近は若いお客さんも増えてきています。時には常連さんが若者にジャズを教えたり、悩み相談にのっていることも。世代を超えて良さを共有することができたり、自分の知らない新たな世界へ導いてくれたりするところも音楽の大きな魅力です。NOWはお酒を飲まずに珈琲と音楽を楽しむ、ジャズ喫茶としての利用もOK。自家製クリスピーピザやホットサンドなど、ご飯のメニューも好評で、奥にはテーブル席もあるのでグループで来ても安心です。ジャズバーと聞くと一見敷居が高いように感じられますが、NOWでは自分なりの楽しみ方で心地よく過ごすことができますよ。

希衣子さんは「このまちからこうやってちゃんとジャズを聴ける場所を無くしちゃいけないと思うんです」と、まちに唯一残るこのジャズバーを存続させていくことの意義を語ります。1970年以降の吉田のまちの歴史はジャズと共にあり、今でも西裏ジャズの取り組みは続いています。NOWはこれからもこのまちになくてはならない存在として、音楽の愛好家たちに愛され続けていくでしょう。
お店ではもちろん曲のリクエストも可能です。あなたの大切な一曲を、最高の音質で思いっきり味わってみませんか?
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