二川伊料理店 NODO

By 2019.01.01SHOP


「NODO」は2017年9月にオープンした、イタリアンをベースとしつつ、ここにしかない“NODOらしさ”が四季折々で味わえるお店です。
お店はもうすぐ築170年になろうとする古民家を再生させてつくりあげました。14年ぶりに山梨に帰って来たオーナー秋山亮平さんの想いと、その想いがたぐり寄せた偶然の出会いの集結でできた素晴らしい場所になっています。

ぼくはまだnodoができる前、古民家を改修する際の大工を担当していた甲斐の匠、小田切さんから会いに来た方がいいよと言われて伺ったことがありました。この古民家のリノベーションの設計・デザインを諏訪のReBuilding Center JAPANが担当し、施工や大工仕事を小田切さんや秋山さん自身が日々つくりあげていたのです。
14年ぶりで知り合いの繋がりがまったくない山梨で、誰に相談していいかわからずたまたま買い物に行ったリビセンに行ってお店づくりを相談したら(むしろ助けてくださいと懇願に近かったそう)、大工さんやデザインをできる人や食材をつくるひとたちとの出会いに繋がっていったそうです。秋山さんはその後DIYをすすめ、もう1人の旅する大工さんと寝泊まりをしながらの共同生活でお店を仕上げました。
ぼくはそんな工事真っ盛りの時に、労働もろくにしないのに話を聞いてまかないを食べさせてもらったりしたのです。その時の麻婆豆腐の美味しさが忘れられないと、いまだに事あるごとに秋山さんには伝えています。たぶん、今まで生きてきたなかで食べた麻婆豆腐で一番おいしかったんですよ。冗談ではなく。
もちろんNODOで麻婆豆腐は出てこないので、その後食べれてはいないのですが。

車をとめて正面にまわって立派な門からNODOの世界に入っていきます。立派なのれんが出迎えてくれ、その先に広い庭と大きなお店が待ち受けてくれています。
古民家もただカッコよく再生させるのが秋山さんの目的ではありませんでした。例えばトイレの壁は、前の状態の時に壊した土壁を再利用しもう一度土壁にして再現しました。新しいお店だけど、今まで使って来た人の愛着を自分が使う事で壊してはいけないと肌で感じ、料理と共に伝えていかなければならないことが多くあるということに気づいたそうです。
店内でも一番目立つのが巨大な一枚板のテーブル。これも秋山さんがどうしても作りたかったもの。みんなで囲う感じがいいし、偶然の出会いや会話がここから生まれるかもしれないと。大きすぎるので外で作って搬入ができないため、店の中でみんなで手作りしたんだそう。
店内にはNODOとして生まれ変わったけどどこか懐かしさを感じる場所が多くあります。

料理はお昼のコースが1800円と、メインがつく2500円のコース、夜が4000円のコースのみとなっています。
お昼を食べに行ったのですが、友人と話しながら、料理に感動しながら気づいたら2時間も経っていました。次々に運ばれてくる料理の美しさと美味しさで会話も弾むしかないのです。
昼のコースについている近郊野菜の前菜盛り合わせは、近くの農家さんに作ってもらった10種類以上の野菜があり、その各食材にあった調理方法や味付けがしてあるこだわりよう。秋山さんいわく「作り手によって野菜の味も違い個性があり面白いんですよ。自然と向き合ったり、生産者さんのことも伝えたい。地域に愛されながら、地域の人と一緒にお店を作り上げていきたいんです」と。

「NODO」とはイタリア語で「絆」「結び目」「中核」という意味を持った理念でもあるそうです。
多くの出会いを未来に繋げていく場所、古き良き物、日本の文化を残し伝え、地域に愛される中核になる事を目指そうとつけられた意思のある名前です。
さらに農と土、このふたつの言葉にも通じているんですよね。畑や大地、食べるものを作る人たちに感謝の気持ちを持って、芯がある料理を作っていきたいと秋山さんは語ってくれました。

最初に書いた“NODOらしさ”とは、そういったこの場所で生まれたものと秋山さんの想いがあわさったここにしかないものです。
おしつけがましくなく、気負ったところはあまり見えずに静かに場と料理に纏われたもの。それは秋山さんが目指すのがシンプルに「おいしい食べもの屋さん」だからなんでしょう。
いつかまた麻婆豆腐を食べらえることを期待しています。

BEEK

Author BEEK

やまなしの人や暮らしを伝えるフリーマガジンBEEKです。日々の暮らしの中から、やまなしの“いま”を伝えます。

More posts by BEEK