すくすくそだつ、広告。 Issue 02

「#私たちのすべて」は、富士吉田の高校生たちが、この地域とフジファブリックのことを知ってもらいたいと始まった取り組み。富士吉田やフジファブリックに関する思い出などを「#私たちのすべて」のハッシュタグをつけてSNSに投稿してもらうべく活動をしています。

この取り組みの始まりは、「未来の大人がもっと自分らしく活動できる社会」を目指し、学校と地域をつなぐ役割を果たすNPO法人「かえる舎」の斎藤和真くんに声をかけてもらったところから。フジファブリックを自分たちの高校生世代や、もっと多くの人に伝えたいと地元女子高生4人が構想していたことを斎藤くんが汲み取り、高校生に広がりやすいSNSでの発信と、地元の人やフジファブリックファンにも見てもらえるようにポスターにして掲示しようということになりました。BEEKではそのポスター制作のアートディレクションを担当しました。

まずはポスターで使う写真を撮ろうと、天気のいい12月初旬に皆で集まりました。フジファブリックの曲から富士吉田を連想できる歌詞を選び、撮影場所、ポーズなどを一緒になって考え撮影しました。
実際、ボーカルの志村正彦さんが見ていた景色、通っていた場所が市内にはいくつかあります。時を経ても、変わらない空気感はそこかしこにあるはず。志村さんがつくった曲を聴いて地元の高校生たちが大切な何かを感じたことが証明しています。
そんな想いを繋げるデザインや写真（つまりは広く告げる広告）の役割もとても重要な意味を持つと受け止めて、彼女たちの今しかない時間を写真に記録することに必死になりました。彼女たちも、『私たちだから伝えられること』に全力で向き合い、楽しんで撮影に臨んでくれました。
ポスターで使った写真以外にも、実はいろいろ撮影しているんです。

ポスターの目立つ「#私たちのすべて」の文字は、斎藤くんが頼みたい書家がいると言って教えてくれためいめいさん。（https://twitter.com/iimeimeii）いくつかパターンを書いてもらえましたが、いちばん高校生にシンクロするエモーショナルなこの字体を選ばせてもらいました。ポスターデザインではフジファブリックの「四季盤」にオマージュを捧げたいと最初から考えていました。
すべてのパーツが揃ってポスターが完成したときには、彼女たちの想いを形にしっかりできた実感がありました。

そうして下吉田駅にポスターを掲示させていただいたのが12/21。志村さんの命日を前に、ちょうどこの日から富士吉田市の夕方5時の防災無線が「茜色の夕日」に変わりました。この時期、例年なら多くの志村さんのファンがこの街に訪れるそう。今年は新型コロナウイルスの影響もあり、遠方からの移動も控えるタイミングだったこともあり、ファンの皆さんのためにもこの日に間に合わせたかったのです。「#私たちのすべて」で、遠く離れていても志村さんの想いをみんなで共有しようと。

プロジェクトが始まったら様々な反響がありました。ポスターは4種類を1枚ずつポスター印刷して下吉田駅に掲示していただけなのですが、富士吉田市役所の方がこの取り組みを見てとても共感してくださり、市役所内でポスターサイズで刷り増しして撮影場所のお店などに掲示しれくれました。さらには、「#私たちのすべて」の高校生たちの先輩にあたる、地元富士吉田で志村さんの同級生たちを中心としたフジファブリックのことを伝える「路地裏の僕たち」というメンバーのみなさんが、高校生たちのポスターに対して自分たちもなにかしようとアンサー写真を撮影して活動報告をしているSNSにアップしてくれたのです。
これには地元の大人たちの本気を見てとても嬉しくなりました。全力出してるのが伝わってくる写真、ほんとそっくり！おじさんたちが無理して走っているのを想像するだけで胸熱です！（笑）
路地裏ニュース2020冬その10

インスタグラムでの「#私たちのすべて」の投稿や取り組みを投稿したtwitterでもファンやいろいろな方々からの反響がありました。高校生たちの想いが写真やポスターになり、インターネット上や街中で広がっていき、まわりの大人たちがそれをそれぞれの立場で自然と応援してくれるというサイクルが、しっかりとすくすくと育っていまも広がっています。
斎藤くんが「告白でもありましたね、高校生たちから志村くんや街への」と言ってくれたのがとても印象に残っています。
誰の青春も、終わってはいないんだ。

Direction : 斎藤和真（かえる舎）
ART DIRECTION, POSTER DESIGN, Photo : BEEK
DRAWING : めいめい
「私たちのすべて」　https://www.instagram.com/watashitachino_subete/