パタゴニアの南喫茶店(回想)

By 2018.09.08SHOP

かつて甲府という最果ての地にパタゴニアの南喫茶店というお店がありました。店主はWATER WATER CAMELというバンドのボーカル、シンガーソングライターでもある齋藤キャメルさん。肩肘はらずにふらっと寄れるところはまさに喫茶店、でも齋藤さんが作る料理はどれも趣のあるもので美味しい飲食店でもありました。
静かで小さな図書館のようなお店。ぼくが初めて行った時に思った感想です。たしか、山梨に帰って来たばかりでBEEKを作り出そうという時に一人で訪れた記憶があります。ぼくはその後数々の奇跡のような時間をこの店で体感するのですが、初日にもありえないような人とのめぐりあわせがありました。まあその話は話すと長くなるので置いておいて…。

そんなに足繁くは通えていませんでしたが、昼間にふらっと1人で行ったり県外から山梨に遊びにくるという方々を招いたり、夜の特別な日のごはんを友人たちといただいたり。日常の中にそっとありつつ、特別ではないけど特別な雰囲気も持つお店。言葉にするとなんともあっけらかんとしているのですが、パタゴニアの南で流れる時間はここにしかなく、他のどこにもない時間でした。すべての間がいいのです。食べるという行為や美味しいと直接的に感じる以外の大切な見えない何かも(その何かは人によって違うと思うのですが)、最果てから日常に戻るときに持って帰れていたのではないかとお店がなくなってから感じました。
「豚のアマトリチャーナのパスタ」がぼくはいちばん好きな料理でした。ランチセットでジンジャーレモネードを添えて。料理には地域性や歴史がとても反映され、そういう料理にとても興味をひかれるそう。料理の外に人の痕跡がある。店主は意外と人にとても興味を持って人が好きなんじゃないかと妄想してニヤニヤしてしまいます。

パタゴニアの南喫茶店は2016年3月13日をもって甲府のお店を閉じ、福岡にお引越しをしました(お店はまだやっていないですけどね)。その1ヶ月前、ぼくと同じく(いやそれ以上に)この店を愛するやまゆりの店主、内藤さんとお休み中のパタゴニアの南を訪れました。その理由は「豚のアマトリチャーナのパスタ」のレシピを齋藤さんから教えてもらうためでした。内藤さんはもうずっと食べるものを作ってきたひと。齋藤さんがつくるアマトリチャーナにとても感じるものがあり、山梨でも折があればその料理を引き継いで出したいと思ったそう。齋藤さんはその申し出に快くこたえてくれ、日常で焼けるパンの作り方を内藤さんに聞いてもいました。
そんなふたりの食を継ぐ場にぼくは居合わせてとても愛おしい時間の記録をしていました。料理に精通していないぼくはこの日も気の利いた言葉を発することはできませんでしたが、まあそんなことは2人は求めていないので。

そしてパタゴニアがお引越して2年とちょっと。ついにその折がある日が訪れます。
WATER WATER CAMELは長いお休みをとっていて、最近はソロでツアーをまわる齋藤さん。9/16に少し遅れた夏休みとして山梨に帰ってくることを聞いて、ぜひ山梨でライブしてほしいなーっと声をかけたら「タイミングもよいしいいよー」と言ってもらい、BEEKも入居している韮崎のアメリカヤに来てもらうことになりました。
アメリカヤには1Fに「食事と喫茶ボンシイク」という、こちらも喫茶の名前を冠するとても素敵なお店があります。つまり厨房があるのです。これはもうここでやらねばいつやるんだとばかりに内藤さんにも声をかけ、パタゴニアの南喫茶店のアマトリチャーナをボンシイクで再現することになりました。まったく同じというか、レシピが同じでも作る人によって料理の味や感じ方が違うと思うので、パタゴニアの南のやまゆりのアマトリチャーナと思ってもらえたら嬉しいです。他にも煮込みとパンがつくセットや当時のドリンクも再現予定です。
齋藤さんはたぶんキッチンでニヤニヤしながら、料理をお客さんにサーブしてくれます(してもらいます。働いて、齋藤さん)。かつての店主と想い出話に花が咲いたり、はじめましての人もぜひパタゴニアの南喫茶店の息吹を少しでも感じてもらえたら嬉しいです。そんなぼくの想いを実現するために、自分たちの料理をこの日は控えて場を快く貸してくれるボンシイクさん(ふだんもとても料理美味しいのでまた来てくださいね)、料理を作ってくださるやまゆりのみなさん、そしてニコニコしてそれを見ているだろう齋藤さんに心から感謝しています。


パタゴニアの南のやまゆりは11:00〜16:00まで予約不要でアメリカヤ1Fボンシイクで開店しています。

齋藤キャメルソロライブ「杪夏 (びょうか)〜パタゴニアの南からの便り〜」こちらは要予約です。
時間:17時開場、17時30開演  場所:アメリカヤ1F ボンシイク(韮崎市中央町10-17)※駐車場は近隣のニコリという施設が4時間無料で駐車できます
料金:3200円(ワンドリンク付) 高校生以下無料
申し込み:beekmagazine@gmail.com (お名前、参加人数を添えてお申し込みください)

喜びは食卓に、悲しみはトイレに流してお待ちしております。

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Author BEEK

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