サステナブルワリー「うちゅうブルーイング」

By 2018.08.06SHOP

山梨県北杜市は日本名水百選に3カ所選ばれているという水がとても豊富で綺麗な場所。湧水は50カ所以上あると言われています。水のおかげなのかパン屋さんがとても多いんです。そして水と関連深いお酒も日本酒、ワイン、ウイスキー、そして地ビールとありとあらゆるお酒が作られています。北杜市の地ビールといえば、タッチダウン。萌木の村のROCKで飲めます。こちらもいつか紹介したいのですが、今回新たに美味しくて地域の新しいハブともなりえるブルワリーが北杜市に立ち上がることになり、その瞬間を記録していたのでこの勢いあふれるブルワリーを紹介させていただきます。その名は「UCHU BREWING」(うちゅうブルーイング)。

うちゅうブルーイングで醸されるビールは「うちゅうビール」。とても気になる名前ですが、この醸造所をセルフビルドも取り入れ作ったのが「宇宙農民」の醸造担当の楠瀬さん(通称隊長)とクリエイティブディレクターの鈴木ルミコさんです。

「宇宙農民」とは2009年に北杜市に移住し米や野菜を自然農法で育て、自然の摂理に合わせたサステナブルな暮らしを農業から発信し続けている農民集団のことです。楠瀬さんと鈴木さんだけが宇宙農民というわけではなく、田んぼや畑を一緒に手伝ってくれる仲間たちを含めての総称です。
宇宙農民さんの紹介を始めるとそれだけで終わってしまうくらい、様々な活動をしているのでさらに詳しく知りたい方はこちらで。
http://uchunoumin.com/
ぼくがいつも宇宙農民さんに感じているのは、この北杜の自然でできることを考えて、ごくふつうに、まっとうな暮らしをして楽しもうという精神があふれていて、宇宙の広がりのようにじょじょにそれが広がっているというイメージです。そう、宇宙は常に拡張しているんです。

そんな二人がブルワリーを作るきっかけになったのは、ポードランドに訪れたこと。
ファーマーズマーケットや食に関するお店をまわっていて、たまたま入った店でたまたまその店で造られていたクラフトビールに出会います。そのビールに衝撃を受けた楠瀬さん。香りが高く、おもしろいビールがあることに驚き、その場で調べて香りの元がホップだということを知りました。
帰国後、すぐにホップを自分で栽培したいと動きだしました。思い立ったら即行動はすごい。
しかしながら、日本でホップの栽培は盛んではなく、ほとんどを輸入し栽培方法を学ぶ書籍すら出回っていないという現実を知り、地道に栽培の実践を繰り返しました。北杜市は昔ホップの産地だったという偶然も重なり、あまり実例がなく不可能かもしれないと思われていた自然栽培での収穫に、なんと初年度から成功しました。もうこうなると、このホップで造ったビールを飲みたくなっても不思議ではないですよね。

初年度は岩手県の小ロットでも醸造してくれる醸造所にお願いしてビールを造りました。できたビールを身近な人たちに飲んでもらうと、今まで飲んでいたビールとぜんぜん違うなどの意見をもらい好評でした。材料や造り方によってこれほどまでに違いがでるビールの世界。この面白さを体現するために、これはいよいよ自分でビールを造らなくてはならないと決意を固めていきます。
そして出会ったのが甲府で全国にその名を轟かすクラフトビール「Outsider Brewing」。アウトサイダーのビールを造る丹羽さんは、何十年と独自のビール作りをしていて技術力も高く美味しくてユニークなビールをつくることで全国にファンもとても多い方。アウトサイダーの上はポートランドと同じく、その場でビールが飲めるブルーパブ。楠瀬さんは迷わず研修依頼を申し出て2ヶ月通いこんでビール造りの基礎を一から学びました。

そして2017年「UCHU BREWING」の着工にのりだします。「なんでもできることはやる」という宇宙農民のDIY精神のもと、仲間たちと共にコンクリートを打ち、中古の鉄骨を組み立て、屋根や壁をつけ、窓を入れ断熱材を施工したり、塗装、配線工事などもしました。クラウドファンディングにも参加し今までの繋がりや新しい繋がりも生まれながら成功し、1年越しで醸造所が完成しました。そう、地球がハッピーになるビール醸造所の誕生です。
UCHU BREWINGが目指すのは「サステナブルワリー」。ビールの原料はどれも大地からの贈り物で、搾った後のビール粕や排水は浄化・堆肥化し自然や畑に返してまた新たな命の糧になります。原料に関しては輸入品も併用しながら、できるだけ自家産やオーガニック原料を使用します。彼らが目指すのは作れば作るほど、飲めば飲むほど地球や生き物、そしてみんながハッピーになる。そんなビールづくりを考えているんです。日本中で活躍されているパーマカルチャーデザイナーの四井真治さんが監修で入ってくれています。図で描くとこんなイメージです。


そして2018年5月19日、ついに自分たちの醸造所で、自分たちで造ったビールが完成しました。「ビールができたよ!全員集合!」というイベントを開き、ブルワリーとビールのお披露目を一般開放して開催しました。当日はこの日を待ち望んで来たお客さん、クラウドファンディングで応援してくれた人など多くの人がビール飲みたくなる天気の中集まりました。ぼくがイベントに少し遅れて着いたらビールを飲む行列ができていたほど。
ほどなくして宇宙農民のお二人が乾杯の音頭を。ほんとうにここまでおつかれさまでした、「カンパーイ!」

みなさん自由におしゃべりを楽しみながら、醸造所をのぞきながらビールを楽しんでいました。この日飲めたのは、「宇宙IPA」「宇宙ALE」「BIG BANG IPA」の3種類。どれも個性的。ぼくはBIG BANG IPAをチョイス。とにかくホップの香りがすごい! 酵母とホップが宇宙で出会って爆発しているようなイメージです。これほんとにそう思えるんですよ、飲んでみると。アルコール度数は高め、飲めないぼくは撮影のピントがあわなくなるのでほどほどに。
北杜市の開けた空の下、ビールを飲みながらこの場所に集まっているみなさんがとっても笑顔なんですよね。うちゅうビールがきっかけで、人の輪もこれから少しずつじわじわと広がっていく予感をこの日とても感じました。

ふだんは醸造所の見学はおこなっていませんが、この秋くらいには小さなパブを作って日にち限定でビールを醸造所の前で飲めるようにしようという計画もあるそう。
自然が豊かな北杜市に遊びに来たついでに、この土地の恵みを受けまくってできたビールを飲めたら最高ですよね。

実際に醸造所が稼働してから、全国様々な場所にうちゅうビールが旅立っています。その様子はうちゅうブルーイングのFacebookページでリアルタイムでご確認ください。

この夏、地球にやさしく楽しくパンクなビールにぜひ出会ってみてください!


うちゅうブルーイング
山梨県 北杜市高根町蔵原937-1
http://uchubrewing.com

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