凡そ日記_2022.2月

 

2022.2.1

今日は、ゆうきさんと喜久乃湯温泉でマルシェのことについて話す。

無料コーナー(駄菓子コーナーのようなもの)作ったらお金のない人も、ある人も楽しめるよね(お客さんと出店者さんの垣根をなくす、循環)
やっぱりどのお店行っても全然わくわくしないよね〜

「ワクワク」って何だろ、そんなことを銭湯で二時間ばかり話した。家で話すより余程、新鮮で気持ちの良いアイデアが出た。

家族っぽい写真を撮ったりする

 

2022.2.2

書店に良い雑誌ばかり置いてあったら我々破産してしまうでしょう?
だから僕たちがこういった下らないものを置いているんですよ

そういえば最近ゆうきさんがヘンテコな甲州弁を使うようになった。

「あ〜そうずらけえねえ」
「ホウズラケ、ホウズラケ」
「安心してろし」

数日はこちらも、それ間違ってるよと真面目に指摘していたが、一向に変わらないので(というか彼は意識的に間違えているけれど)諦めてしまった笑 というか、「それは間違っているという我々の認識すら実は本当なのか?と問われているような気持ち。になった。である。

2022.2.3

マルシェをやるにあたり、本の貸し出しもやることにした。
本を売るのは何か違うなーと、何度考えてもしっくりこなかった。

今回本を「図書館」にした理由というのは幾つもあるが、そのうちの一つに火事が怖い。と言うのがあった。
一つの場所にいくつもの本(あらゆる生活用品があてはまるけどね)を置いておくのはとてもリスクのあることだと思っていて。笑

ネットで注文しておいた、貸し出しカードを使う。今回はカードの枚数と同じ百冊を選んだ。千冊くらい出来たら達成感ありそうだ。

今回の「図書館」目標は、友達に一冊でも本を貸すことかな〜

 

2022.2.5

二日間のマルシェが無事終わった
確信したのは僕が金儲けをしたい訳ではないということ。
一万円のコートを2000円で売った。それなのに僕はとても気持ちが良かった。
友人が会いに来てくれた。僕は嬉しくて仕方なかった。こんな感動があるのかと思った
売り物の花火を勝手に持ち出し、焚き火で楽しむ子どもたち。本当に楽しそうだった。

終わってみれば僕の図書館の在庫は20冊くらいがなくなっていて、(実は半ば強引に友人たちに本を貸し付けた笑)飾りにと出していた僕の高校の頃の体育着や、バイト先の制服まで売れていた。
ふら〜っと来てくれた友人たちは不思議なことに大体二、三時間くらいは滞在してくれた。みんな(僕も含め)、余程この街に退屈しているみたい。焚き火の前で暖まりながら、最近どう?なんてゆっくり話をする。

マルシェが終わってみて、ふと、僕は人を愛したい という「気持ち」が自分にあることに気づく。それはとても根源的なものだった。心から感じる、ある種僕の中にある当たり前のもの、どうして今まで気づかなかったのだと。
それは新しいもの、もしかしたらそれは継続的なもの、一瞬間で終わる、愛想なんかのいらないずーっと長いもの。永続的な関係のようなもの、だ。そこは泉の源泉みたいなもの。ところ。僕はそれを大切にしたいと思った。だから時々こうして人を集めて遊ぶのは大事なんだ。

2022.2.6

杏奈ちゃんと蓮ちゃんは今日帰っていった。
ゆうきさんはすごく寂しそうにしていた。さっきは母と口論したりした。皆んなが納得の平凡な毎日。ゆうきさんが先に寝たので僕は風呂に入る。
僕は「街の人」を聴いて、ここ数日のことやマルシェのことなどを考えた。懐かしい人たちと会うたびに、僕は、ひとってなんて淋しいものなんだろう。と思う。
僕は今日ピアスを空けた。少しくらい大人になったふりなんかして笑
人の真心に触れるとどうしても泣きたくなってしまう。久々に武者小路の言葉を思い出しては、自分の様々な欲求が果てしなくださく思てしまうよ。
大丈夫。僕はちゃんと愚かです。そんな、大きな優しさであります。おはよう。明日もあるさ~

2022.2.7

午前中、ゆうきさんと一緒にマルシェの片付けを終わらせ、昼過ぎからダラダラ布団で過ごしている。
ああ、鬱みたいだと思う。最近は躁の状態がとても短く、独りになる時間はとにかく僕が今死んだらどうなるだろう、なんて考えてる。とにかく流れる時間全体を虚しく感じるんだ。いっそ眠気がばーっとやってきて12時間ばかり眠ってしまいたい。
そういえば中江くんが言っていたな。もう一度死ぬと決めたから、死にたくなったら死のう、そう覚悟してからだいぶ楽になったと。
うん、僕はまだ死ねないな。けれども死ぬことばかり考えてる。とにかく生きているということが辛くて仕方ないんだ。早く春がきたら良いのに
坂口恭平の歌を「ゴルフ」「休みの日」「カレー屋」の順番で聴き、少し優しさをもらう。ゆうきさんを誘って深雪温泉にでも行こうかな。こうして動かないといつまでも下らないことばかり考えてしまう。なつの合格祈願の御守りも買いに行かなくちゃ。マルシェに来てくれた友人たちにお礼の連絡をしたい。色々やること沢山だ。どうして僕はこういったことに、こんなにも体力を必要とするのだろう。
くるりの奇跡を聴きながら眠りにつこうとする

僕はこのままでいいんだろうか。そんなことばかり考えている。年齢ってそんなに大事なものなんだろうか?ゆうきさんは僕に「たかやは年上とばかり接しすぎているから、もう少し歳の近い人と接した方がいい」と言われた。実のところ僕もそう思う。しかし歳の近い人と話すと辛いんだ。辛くて仕方ない。どうしてそう思ってしまうか、きっと、思い出してしまうんだろう、自分が若いということを。僕はもっと先を見据えて生活をくみたてようとしているものだから、若さからくるそういったがむしゃらな楽しみ みたいなものを諦めてしまっているのかもしれない。だからそれを思い出しては、これでいいのか。と思うのではないか。いや、ただ僕は友達が欲しいだけなのかもしれない。実際、何か同じ思いを抱えながら、ある方向へ共に全力で向かうことのできる友人が一人でもいたら、僕はどんなに楽だったろう?いや、そんな考えは傲慢だ。別に僕は誰に左右される訳ではなく、自分の為にやるのだ。ただ、それが少し寂しくもあったりする。僕のことを理解してくれるのは、いつだって大人だった。

でも、僕は僕の意志も含めこれからの方向性について間違っていることはひとつとして無いと思う。だから尚辛い。夏芽とは今後どんな話ができるだろうか?不安に思う。一番不安なのは自分のこと。

夏芽から写真が送られてきた。同級生の皆んなと普段使っている参考書に「合格」の2文字。夏芽に会いたい。offering chant を聴きながら、たけとさんに感謝する。そういえば、高校の頃は淋しくて淋しくて眠れない夜ばかりだったな、そんなことを思い出した

2022.2.8

夏芽に迷惑をかけてしまった。迷惑?違う。どうにもならないこともあるものだ。言葉で説明できる類のものではなかった。僕はきっと夏芽を幸せに出来ない。そんなことを、いつもより実感してしまった。いや、正確には、僕がもう諦めてしまった。というのが正しいだろう。誰も、悪くはないんだ。
誰も悪くないのに、こうなってしまうこと。「そんなこと」があることを、僕は今日初めて知ったかもしれない。
色んな風景が際限なく浮かんできては、ああ、もう終わったんだ、と実感する。
夏芽の最後の表情を、僕は生涯忘れないだろう。
彼女の前ではもう、思い切り泣き出してしまう他、上手く立ち振る舞う自信がない。

昨日、ちょうど僕は、夏芽と付き合う前のメッセージのやりとりを見て、こんな幸せな時間だったんだと思ったばかり。それをさっき、夏芽に話したばかりだった。「そうだねえ。私たち時々、そういうのをみて…」
その、後のこと。ねえ、これはきっと神様のいちばんの悪戯だよ。

死んでしまおうかと今は思ってる。たぶん僕が夏芽に別れを切り出すよりは、その方が随分と理屈が通っている気がする。考えすぎだって?考えに考えたよ。けど、このまま僕が悪いもの、として去ってしまうほうがいいと思ってる。僕が謝って、いつも通りになるのは、今回は違うと思うんだ。我慢の限界?いいや、そんな簡単な言葉じゃ済ませられない。そんな言葉で済むのなら、僕らはとっくに離れ離れになっていたのだから。

てっきり僕は夏芽とずっと一緒にいるものだと思っていた。まあそれは今も同じなんだけど。世の中、中々上手くいかないことばかりだよ。特にこういう、愛とかいうもののやつについてはね。
さりげなく、ありがとうと言いたい。何の気なしに、さよならと言いたい。
時々はお互いの顔を思い出して、あの頃は良かった。と言ったりする。今でさえわかる。僕は自信を持ってそう言うだろう

肌で感じてしまった。このまま離れてしまうのだとわかってしまった。
すると、どうだろう。所々に夏芽がいることに気づく。この家にはまだ夏芽がたくさんいるじゃないか。ストーブの横には体育座りをしてうたた寝をしている彼女がいるし、部屋に入れば彼女の匂い、彼女が着ていた「チョキ」周りを見渡せば何処にだって彼女がいた。本当に、何処を歩いても、立ち止まっても涙が止まらない。どうやっても、涙は止まらなかった。
みんなが心配そうに声をかけてくる。「あと少なくとも一年はこうだよ」僕はそんな風にしか答えることしか出来ず、もうこの家にはいれらない、そう実感した。

今日で日記を書くのはやめることにする。今の僕の状態では、おそらく誰かのことを傷付けてしまう文章しか書けないだろうから。
おやすみなさい、いつかの記憶たち。夏芽、僕は君のことをずっと愛してる。ちょっとの間だけ、さようなら。

2022.2.28

今日まで日記を書くことができなかった。
ただ、2月8日の日記をここに載せることを決めた時に、思い出しながらでもいい、その日に書いたものではないにしろ、ちゃんとその後のことも書かなければと思った。

以下は、記憶を頼りに書いたものであるから、多少は出来事に前後があるかもしれない

2022.2.9

国試前に渡そうと思っていたお守りを、夏芽に渡しに行く。本当はどんな顔で行ったらいいのかわからなかったけれど、夏芽にとって今大切なのは国試なのだから、その為のお守りを渡しに行くのは許されるだろう、そう思った。これだけは渡したかった。
夏芽は僕の違和感に気づいたらしく、「私たちお別れしちゃうの?」とこちらに聞いてくる。やめてくれよ。そう思ったと同時に涙が溢れてくる。しばらく何も話せなくなる。

試験の前に別れ話を切り出すなんて、そんな恐ろしいことは僕には出来なかったから、試験が終わってから、ちゃんと話そうと思っていた。僕の覚悟というか、この意志みたいなもは、相当に強いものだったと思う。
けれども、ひとりの人間とたった1つの関係を終えるということがこんなに辛いことなんだとは思ってもみなかった。しかし、僕は実際今それを望んでいるし、そのことに不思議と安心している自分もいる

くるりの奇跡を何度も聴く

2022.2.11

今日は夏芽が国試に向けて東京に出発の日。13日の試験地が東京だから前乗りで数日前から東京で過ごすという。
朝、行ってらっしゃいを伝えに夏芽の家に行く。
もう、お互い普通に話せている。しかし僕の方は極力国試のこと以外話さないようにしていたと思う。手紙を書いたのだが、「誰のためでもない、坂本夏芽自身のために頑張ってきてね」そう言葉を添えた。夏芽ならきっと大丈夫だよ。本当に、そう思った。

2022.2.14

試験が終わったらお話しをしようと言っていた。

昼頃、万力公園で話すことに。話をするならここで、と思ったのだ。それぞれの車で向かう。

僕は、今日、彼女と別れるつもりでここに来た。彼女と初めて会ったのもこの場所だった。

今日まで、僕は何も出来なかった。やるべきことが何一つ手につかず、仕事にも行くことが出来なかった。死人のような僕だったけれども、日が経つにつれ、少しづつ哀しみが小さくなっていたのも事実だと思う。
だから、僕の心には迷いがあった。このまま全てを話して終わってしまうのか、全てを話してなお、大きな、見えない何かと戦っていくことを選択するのか。
僕は冷たい人間なのかな。そんなことを何度も考えた

国試はどうだった?そんな話から始まり、少し世間話をするが、僕は我慢ができず本題に入る。夏芽も少し緊張した様子だった。

僕は僕の話をした。覚悟を持って自分の気持ちを話した。
ちゃんと人を愛したいんだということ。そこに男女の壁はなく、みんなが幸せになってくれたらいい。そういった関わり方を僕はしたいのだということ。

僕は僕の変わらないところを、夏芽は夏芽の苦しみを話してくれた。

話を終えた時、僕にはもはや、彼女と共にやっていくという選択肢以外はなかった。それは彼女も一緒だったと思う。その上で、それでも一緒にいたいねと。それぞれの問題についてちゃんと向き合っていこうと決めた。お互い恐ろしいくらいの覚悟を持って話したからこそ、前を向こうと心から思えたのだと思う。

気づいたら、僕らは自然とこの後の予定について(チロルに行きたね、なんて)話していた。
はあーまったく。とお互い顔を見合わせて笑ってしまう。「一緒にやっていくんだ」

夏芽は大粒の涙を流していた。僕はこれが最後の写真になると思ってシャッターを切った。
撮っていいか、悪いかなんて考えることはなく、からだが勝手に動いていた。
そんな、何枚か。許してねなつ


そうだ、今日のことをからだで表現してみない?万力公園を後にする前に、僕らはお互いを撮りあった

2022.2.15

自分の問題と向き合うと決めた夏芽に、早速良い機会が訪れる。
今日は占星術の先生のゆきさんが家に来てくれていて、たまたま空いた時間があるという。夏芽はゆきさんとセッションをすることに。

話をした後の夏芽の顔はいつもより清々しかった。
夏芽が聞いたのは僕と夏芽の過去生。

遠い遠い昔の話。
僕と夏芽は小さな村で一緒に暮らしていた。ある日僕は家を出る。旅に出るといい、家を出たらしい。夏芽はずっと僕の帰りを待ち続けていた。しかし何年経っても僕は帰ってこない。もう僕は帰ってこないことを悟った夏芽は、いつしか他の人と結婚し家庭を築く。
しかし、数年して僕はひょこんと帰ってくる。家には夏芽の姿はない。

話によるとこんな感じらしい。夏芽がいつも僕に対して感じていた不安というのは、こういった類のものだった。夏芽自身、いつも言葉にできない不安を抱えていて(それはいつも僕自身に対してだった)その根底にあったものが何かわかったことにとても安心していた。僕も、この話を聞いて全てを理解した。「やっぱり、僕らは過去にも出逢っていたんだね」

だったら僕たちは全部話したらいいじゃないか、と。この、小さな過去の物語は僕らの全てを表していたし、それを20歳のうちに聞けて本当によかったと思う。

僕らの問題の根本は、解決したんじゃないかな。8日のことを含め、お互い様々なことが腑に落ちた話だった。夏芽のほっとしたような顔を見れたことが嬉しい。

2022.2.19

富士川町に夏芽とゆうきさんを連れて散歩に行く。最高のパン屋さんと公園を見つけて夏芽は大喜び。良いパン屋がある町は良い町だ。三人が三人、同じことを言っている。
帰りは蘇州でラーメンを食べたっぷりと汗をかく

 

2022.2.23

今日は塩山のコロボックルで開催されている、農MUSICに。
写真はゆうきさんが撮ってくれた僕と母

 

2022.2.27

今日は中江くんにギター教室を開催してもらった。
なつめも一緒に行きたいというから、3人で弦を交換したり、ギターの基本の「き」を教わったりした。
自分で音を作り出せるってなんてかっこいいんだろう!果たして、僕はいつになったらギターを始めるのやら…

馬渕尭也

Author 馬渕尭也

2001年生まれ。山梨市出身。高校時代から周囲の人たちのありのままの姿や風景をフィルムカメラで撮っている。 高校卒業後台湾へ留学。帰国後の現在は、農業をしたり、地域の読書会に参加したりと、様々な場所をウロウロしながら生活というものを日々模索している。好きな作家は深沢七郎 Facebook / Instagram

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