ADVENTURE in KOFU CITY Issue 02 「甲府リノベーションまちづくり」

前回の投稿では甲府中心市街地を、あるていど俯瞰して(わりと個人目線ですが)見てみました。
甲府中心街に実際に住んでいる人、観光で来る人、市街から仕事や立ち寄りで来ている人などそれぞれの立場で考え方や捉え方が違うというところもあると思います。ただ、現状として前回ピックアップした甲府の中心市街地にある課題や問題などは、誰しものすぐそこに横たわっている目に見える問題点でもあるのはないでしょうか。

甲府リノベーションまちづくり。

甲府市は2015年からこういったまちの問題に取り組むために、未来の甲府をよりよいものにしていこうという指標を掲げプロジェクトを立ち上げました。それが今回のIssueで紐解く『甲府リノベーションまちづくり』です。最初は、「リノベーションって家のことじゃないの?」「リフォームとなにが違うの?」「まちをリノベーションするってどういうこと」など、「リノベーション」という単語自体の認知度も微妙な感じだったと聞いています。

そもそも、『リノベーションまちづくり』とはすでに全国各市町村に広がっている空き家や使われなくなった商業ビルや建物を再生(リノベーション)してまちを元気にする取り組みです。今あるものを活かし、新しい使い方を実践していって、空き家や空きビル、公園・道路など遊休化した不動産という空間資源と潜在的な地域資源などを掛け合わせ、雇用の創出だったりコミュニティ作り、エリア価値の向上など多岐にわたって地域経営課題をまとめて解決していくというのが主なコンセプト。

ちょっとこの説明だと長くなるし少し硬くなってしまうのですが、ぼくの第一印象はそれってストリートの発想だなーと思いました。
今あるもの、今ある場所を活かすということは、スケボーやグラフィティアートでは当たり前なこと。メインカルチャーであるパブリックな領域に、そのストリートなカルチャーが入り込む。ストリートだからこそできる小さくても影響を及ぼす力は、ローカルで根付いてそのエリアの個性になっていく。そしてストリートには影響を及ぼす人の存在が不可欠。甲府市が甲府のまちを活かす一つの手段として、まちを活かす人に注目してくれたのではと、そんな解釈をしました。

2015年にキックオフとして、地域の人たちと日本全国でエリアをリノベーションしてきた講師の交流が「リノベーションシンポジウム」「まちのトレジャーハンティング@甲府」を開催して持たれました。その後、2016年に「甲府市リノベーションまちづくり構想策定委員会」をそれぞれまちを想う人たちを集めて組織されました。
メンバーは建築士、甲府のビルの大家さん、街宿のオーナー、まちの味噌屋、大学の教授、商店街のオーナーさん、山梨のワインを発信し続けて来たカフェオーナーなどさまざま。ぼくも山梨を発信するローカルメディア代表としてこの委員会に召集されました。正直、最初は甲府に住んでもいないし、“まちづくり”と名のつく組織にはわりと抵抗があって委員へのオファーを受けるか、断るかかなり悩みました。まちに関わるということは、中途半端な気持ちではできないですし、そもそもまちはいろいろな人の多様な営みの結果でしかないので、それをわざわざ“つくる”という言葉を持って行動するのがどうしても自分の中で消化できていませんでした。
ただ、今回直接お誘いをしてくれた委員会の委員長の青木純さんから、甲府のまちに接するための意気込みを聞かせていただき、その熱意に感化され外から見る目線でよければということでお手伝いさせていただくことになりました。
前述したように、甲府市というパブリックな存在が、ぼくらのような個人に注目してくれたということも、今までにない大きなことだなと思えたのも一因です。
委員になってから、市民の方々や毎回ゲスト講師の方々と交流する中で、甲府の未来をほんとうにそこにいる人それぞれの想いをもって、真剣に語り合う場が多く持たれました。それは会議の場であったり、夜の酒場であったりと、ざっくばらんに話をできる場になりました。

同年に第1回目のリノベーションスクールが開かれ、2017年には2回目も開かれました。リノベーションスクールは、リノベーションまちづくりのコンセプトを実践してまちにコミットしていくものです。空き家などの使われていないその土地の不動産を舞台に、これからのまちの担い手たちにより、新しいビジネスを生み出しエリアの価値を高めていくため、3日間という短期間で企画の立て方、デザインのアイデア、プレゼンテーションの方法、事業収支の計算手法など、実践を通じて横断的に学び、最終日に不動産のオーナーに向けて事業提案を行うという、実践的なスクールになっていました。県内外から様々な受講者が集まり、ユニットマスターと言われるそれぞれの地域でリノベーションを軸にまちに関わる講師の方々と共に甲府のまちの空き家物件で実現可能な事業を考えました。

このリノベーションスクールの主催は甲府市なので、公共と民間が密接に関わることになります。いままでは公共の補助金などを頼りに民間が関わることが多かったのですが、リノベーションスクールが目指すのは公共と民間が連帯するこれからのまちづくりのモデルです。
仲間を増やしながら、まちと人がさらに循環する環境を実現するため、甲府市と場所を運営する市民ができることを明確に提示して、実際の事業プランを構築していきます。机上の空論で終わらせないというのが、このスクールの肝になっているのではないでしょうか。

北九州ではじまり新しいビジネスと雇用が生まれるライブ感、それらが全国にも広がったリノベーションスクール。実際にスクールで関わった建物の提案プランを参加したプレイヤーが名乗り出て、それをスクールで関わった公も民も連帯したサポートのもとビジネスとして動き出す、という動きが多々生まれています。

甲府市の2回開かれたスクールでは、対象の空き家案件がスクールで提案されたプランとして稼働することはなかったのですが、スクールとは別の動きで、それぞれの場所が活用されていって、今はほとんどの対象空き家物件がお店や施設になって動き始めています。
ぼくが甲府でよく行くお店もそうなのですが、だいたいが空いていた店舗を借りて、自分たちで修繕をして建物を使ってお店を開いている人がほとんどなのです。ゲストハウス、コーヒーショップ、飲食店なども空き家を利用してリノベーションしている店が多いことに気づきました。

甲府のまちにはすでにリノベーションマインドがあり、リノベーションまちづくりの兆しはすでに起こり始めていました。

甲府のまちで困っている人がいると誰かが役立つ人を紹介したり、建物の改装をDIYでやろうとSNSで発信すると仲間たちが手伝ったりと、ぼくも実際にそういった場面に遭遇していました。その人がいるから、その人が作っているからと言って甲府を訪ねてくる人は多いと感じています。甲府の魅力の中心にはそういった人の魅力が欠かせないのです。まだまだ住んでいる人も気づいていない温泉やアートや自然などの地域資源に光をあて、今までの甲府カルチャーを担って来た人たち、これから担う人たちという人の交流が盛んになることが甲府の未来に繋がる大切なことと確信できたことは、リノベーションスクールに関わったからかもしれません。

問題は山積み。
公共空間はまだ変わってはいかない。
だけど、甲府はすでに自分のやりたいを実現している人が多い。
策定委員会の中では誰かの“やりたい”を増やしていこくことを大事にしたいという考えが芽生えました。
誰かの“やりたい”がきっかけで、さまざまな人が出会い交流する、あたらしいまちのかたち。甲府都市圏の潜在資源も今回の取り組みで再度全員の共通認識の中ではっきりした住み分けができました。
まちと自然との距離、歴史や伝統の再発見、ワインなど地産の現場と消費地としての意識などなど。とにかく、山梨でいちばんのCity、甲府のまちを遊びたおす。
やりたいができるまち。
ADVENTURE in KOFU CITY。

未来は今この瞬間の続きです。
未来を考えるときに、いつも大好きなジョンレノンの言葉が思い浮かびます。
「A dream you dream alone is only a dream. A dream you dream together is reality.」
(ひとりで見る夢はただの夢、みんなで見る夢は現実になる。)
みんなで考えるからこそまちの未来がそこに、あなたの目の前にあらわれると思うのです。Issue03につづく。
BEEK

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