甲州印伝の伝統をアップデート「印傳の山本」

By 2021.12.20SHOP

「甲州印伝」とは、鹿革を原材料とする工芸品。甲府を中心に発展し、鹿革に漆で模様を付けたものが特徴で、現代では財布や名刺入れ、カバンなど様々な製品がつくられています。鹿皮は軽くて丈夫なので長く使え、漆で表される柄のデザインもロングライフな普遍性で、ずっと愛されています。

その歴史は江戸時代に遡り、丈夫さや保湿性、吸収性の高さから武具としても活用されてきました。十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』(1802〜1809年刊) の文中にも「腰に下げたる 印伝の巾着を出だし 見せる」と登場するほど、印伝は江戸時代の人々に広く愛されていたとされています。

現在、山梨県に印伝を製作・販売する会社は4社。その中の1社である「印傳の山本」の印伝は、初代の山本金之助氏が徴兵時代に海外の多様な色彩に惚れ込んだこともあり、従来の印伝にはなかった鮮やかなカラーバリエーションが特徴です。

店舗には、名刺入れやガマ口、キーケースなどおみやげにも最適な小物が充実しています。自分がほしい商品で、柄や色の組み合わせがない場合は、自分で革の色(20色)、漆の色(3色)、印傳の柄(約50種類)を指定してセミオーダーもできるんです。つまり自分好みの革製品が作れるということ。

現在、代表を務める山本裕輔さんは日本で唯一の甲州印伝 伝統工芸士 (総合部門)の称号保持者なんだそう。印傳の制作はほとんどが分業制のため、一貫して制作できる人は稀なんです。

鹿皮に模様を付けるためのさまざまな技法がある中で、山本さんは漆で柄を付ける「漆付け技法」を中心としたものづくりを行っています。艶っぽくぽってりと盛り上がった漆の強い質感と、皮そのものの柔らかい素材感が魅力です。

さらに山本さんは、伝統工芸だからと言って敷居が高いイメージで印傳を手に取ってもらう間口を狭めたくないという想いから、ゲーム会社やアニメ、漫画、ブランドなどとのコラボレーションを積極的に展開しています。山本さん曰く「甲州印傳の可能性をもっといろいろな人と一緒に広げたい。もっと若い世代にもどんどん手に取ってほしい」とのこと。

今後は印傳の制作を体験してもらうスペースも作っていくそう。長く続いているいわゆる「伝統」は、その時代に沿ったアップデートをするから、「伝統」として残っていくのだと思います。

 


印傳の山本
山梨県甲府市朝気3丁目8-4
055-233-1942
営業時間:平日9時〜18時30分 土曜10時〜18時
定休日:日曜・祝祭日
http://www.yamamoto-inden.com//

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