みんなのピース・ガーデン

仕事で甲州市によく行くことがあります。お昼ご飯をどこにしようかと悩むとき、選択肢の一つとして必ず出てくるラーメン屋さんがあります。塩山駅前商店街で昭和12年からお店を構え、地元の人々に愛され続けているラーメン屋「平和園」です。いちばん初めに訪れたのは、地元・神金に住む農家の古屋くんに「飯食べるなら平和園オススメ！」と教えてもらって来たのが最初でした。そこからその美味しさにはまって、仕事で甲州市にくるたびに寄るようになりました。
現在は、先代にあたる奥さんのお父さんからお店を受け継いだ店主の鶴田清彦さんご夫婦が二人三脚で切り盛りして、伝統の味を守り続けています。ちなみに名前の由来は創業当時、お店の裏に住んでいた警察官が「平和になるように」とつけてくれたそう。世界は平和になっていっているかはわかりませんが、このラーメンを食べている最中は確実に心が平和になっています。

平和園のラーメンの麺は毎日お店で打つ自家製麺。麺を打つ部屋が入り口すぐ横に設けられています。少し縮れた中太麺で、独特な食感や風味がやみつきになります。スープは奥さんが担当していて、とんこつと鶏ガラでとったスープはシンプルだけど麺との相性が抜群。「よけいなものはいれない、シンプルなラーメンがいい」と考えずっとこの組み合わせなんだそう。お店一番人気はワンタンメン。だけどぼくはいつもチャーシュー麺と餃子が定番。ほんとうに飽きない味で、近かったら週に1回は必ず通いたくなります。餃子が世界で一番好きなぼくなのですが、餃子も抜群においしいです。自家製の薄皮と具のバランスがとてもいいですね。前に頼んだ時はたしか羽根付きで出てきました。1人で2人前は食べたい…。

メニューの1品料理のところに、「やきとり（もつ）」と書いてあります。こちらも頼んでみると出てきたのは鳥ではなく、馬！ 先代の頃から続くタレを継ぎ足して作っている馬モツが出てきます。やきとりと書いてありますが、名前に惑わされることなくこの美味しい串もぜひ食べてほしいです。お店の奥には見えにくいのですが、カウンターも存在しているのでビール飲みながら串をつまんで締めでラーメンという最高のコースも味わえます（駅前だから電車で来て電車で帰るコース）。

お客さんの食の好みが変わってきて薄いとか濃いとか、そういったことに対応するのが大変なこともあると店主は言っていました。
たしかに、創業のころとは比較にならないくらい飽食になった現代。欧米の食生活も広く日常になっています。ただ、変わらなくていい味もあるはずです。長年続いて来た味をこれからも変わらず続けてもらうことで、お客のほうが変わっていけばいいと思います。食べることで気づくこともあるのではないかと僕は思いました。食は日々のこと、心をつくっていくもの。ほんとうに美味しいもの、丁寧につくられたものは、きっと人の記憶に残っていくはずと信じています。そう、ここはみんなのピース・ガーデンなのだから。