森の中のパン屋「コンプレ堂」

By 2018.06.08SHOP

『森の中のパン屋さん』というなんとも絵本に出てきそうな表現がピッタリとあうパン屋さんが、北杜市大泉町にある「コンプレ堂」。実は「BEEK ISSUE01 わたしのしごと」の中でも、店主の馬場一樹さんにインタビューをさせてもらっています。当時はこの地でお店を始めてようやく一年が経ったばかりというタイミングで、まだまだ手探り状態だと言っていましたが、5年間の歩みの中でコンプレ堂は着実に地域にその根を伸ばしてきました。

コンプレ堂は朝の7時30分にオープンして徐々にパンが揃い始め、9時頃にはその日の全てのラインナップのパンが出揃います。「毎日普通に食べて普通に美味しいと思ってもらえるパンをつくりたい」と語る馬場さんのパンは、日常に寄り添う優しい味。常連のお客さんは朝早くから『いつもの』と言ってバケットや食パンを買いにきます。遠方からのお客さんは北杜市散策の1日を、コンプレ堂でパンを買ってスタートさせるという方も多いようです。豊富な種類の中から今日はどれにしようかなと心躍らせパンを選ぶ時間は、素敵な1日の始まりを予感させます。
週末や祝日などは、午前中でパンがなくなると一度お店を閉めてもう一度午後にオープンすることも。

取材に訪れた日に、新作のカレーブルストが初めてお店に並ぶ日でした。ソーセージをパンで挟んだドイツを感じさせるパン。ホットドッグ好きなぼくはもちろん買って帰りましたよ。

馬場さんはコンプレ堂のOPENまでに、東京や関西方面で大規模なパン屋から小さなパン屋まで、製造や店長などを経験してきました。そろそろ独立を、と考えていたときに震災があり、それが直接的なきっかけではありませんが、家族のいる山梨でお店を開こうと決意しました。「家族みんなでやろうと思って相談したら皆了承してくれました。僕がパンを焼き、姉と母が販売、父は買い物などの手伝いをしてくれます。誰が何をやると決めていたわけではなく、家族みんなで始めたら自然とそうなっていったんです」

コンプレ堂の意味は、『コンプリートエディション(完成形)』という言葉からきているそうです。馬場さんはパン屋としてただパンを提供するだけでなく、食文化の中でのパンの位置付けの深さ、カットの入り方やパンのカタチに込められた意味合いなどを伝えていくことにも、使命感を抱いていると言います。八ヶ岳南麗の森の中に佇むこのお店から、パン屋としてパンの食文化を伝えるための提案をしていく。そして、今まで経験して得たものをこの場所で形にし、ここでずっと商売をやっていく。そんな決意がお店の名前に表れているのだと感じました。

オススメはミルクパン。シンプルだけど優しくて、飽きることのない素朴な味わいです。毎回行くたびに必ずと言っていいほど買っています。おいしいパンがあってコーヒーを淹れて本を広げたら、それはそれは幸せな時間の完成です。

コンプレ堂
山梨県北杜市大泉町西井出8240-1156
0551-45-7007 7:30~17:30(パンが無くなり次第終了)
毎週水・木定休 日曜日は出張販売でスコヤーコーヒーでの販売となります
http://completdo.exblog.jp/

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