凡そ日記_2022.3月

2022.3.2

富士川町に引っ越すことを決意。知り合いの方に連絡を取ったり本格的に引っ越し先を探し出す。
富士川町に住もうと決意したのも幾つかの理由があるが、
まず第一に人が良い。僕が出会った何人かの人たちは、本気でこの街を良くしようと思っている。その一つの理由だけで、僕はこの町に住む決意ができた。僕も、そう言った単位で街を捉えたいのだから。お隣さんの名前も顔もわからない世界なんてやっぱりおかしいよ。
あとは自然の豊かさ。お米を作れる。水が美味しい。僕はもう、こんな農薬や塩素で汚染された水は飲みたくないのだ。
まあ、理由をあげたらキリがないのだけれど、ひとまず、この土地に住んでしまおう!そう決意してしまえるくらいに、この街の魅力は大きかった。

2022.3.4

夏芽が学校を卒業した。3年間、本当に良く頑張ったね。友人と共に卒業証書を持った彼女の表情は、写真越しでも充分わかるくらいに明るかった。

2022.3.5

今日はゆうきさんに「ポイントゲーム」なるものを教えてもらい、何だそれ!!
早速、得点表を作った。ちゃんと、ご褒美も用意してね。明日から人生ゲームが始まるぞ~

富士川町に引っ越しを決めたはいいものの、物件探しに難航。空いた時間に何をしたら良いかわからず、結構落ち込む。

2022.3.6

明日が僕の誕生日なので、夏芽と誕生日祝いということでお出かけをする。
お昼は西湖のマメゾンでランチ。午後は富士吉田のM−2に行ってゆったり。今回は贅沢に甲府の六曜館に併設されている萬集閣に泊まる。0時を過ぎたら夏芽がプレゼントをくれた。特別なことをしなくたって、一緒にいるだけでいい。
そんな、幸せなひとときを過ごす

2022.3.7

21歳の誕生日を迎える。
「おはよ〜」彼女の寝起きの顔が僕はたまらなく好き。
今日も、夏芽と一緒に一日を過ごす。

朝起きて「ダン」でモーニング。贅沢な朝だ。
その後は、セントラルbe館で細野さんの「SAYONARA AMERICA」を観る。
忘れられない日になった。こんなに最高の映画を、しかも誕生日に彼女と一緒に観ることが出来た。僕はなんて幸せなんだろう。ギターの練習を開始しよう!100パーセントの熱意でもって、決心した。きっと来週にはそんな気持ち、微塵も残っていないだろうけれど…

家に帰ると、せっちゃんたちが出迎えてくれる。ゆうきさんとせっちゃんがプレゼントをくれたり。
本当にありがたいことであります。父にプレゼントをねだると(みんなくれたよ!なんて言い方したと思う)ハタチ過ぎたんだからたまには父にくれてもいいんじゃない?という。全く冷たい人である。来年はそうしますよ

2022.3.8

「おもてなし薬膳せっちゃんご飯」が今日で5周年を迎えた。
当日は大勢の人がやってきた。大切な、温かい人たちに囲まれて過ごす時間。僕は改めて、この場所をここまで築き上げた母の凄さを実感した。

2022.3.9

本格的に引っ越し準備に移るため、お世話になっていたナルラボを今日で退職した。
初めてナルラボに行った時から既に半年が経っていた。
僕はいつも中途半端な関わり方しかできなかった。ずっとそのことを悔いていた。迷惑ばかりかけてしまっていたと思っていた。そう、2人に伝えたが、そんなことはないよと。たかやの存在が本当に助かったよと言ってくれるのである。僕は本当に頭が上がらない。
僕にとって、ナルラボで過ごした時間は、生きていく上で大き過ぎるほどの「基礎」を築いてくれたと思う。香織さん、美和さんには感謝しかない。
けれど、僕の中で、ある一つの場所を離れるということは、「さよなら」と一緒なんだ。だからとても寂しかった。
色々な思いがある。もっとこうしたら良かったんじゃないかな、とかね。ああ、僕はいつだって子供であります。
畑を出て帰り道、なんだか清々しいような、悲しいような、嬉しいような、三泊四日の修学旅行の帰り道のような虚しさを感じた。

2022.3.10

夏芽とチロルで待ち合わせ。いつもの席に行くと、驚くほど髪の短い彼女がいる。
彼女は、ヘアドネーションをするためにこれまで長い髪を切らずにいた。その髪をようやっと切ったのだ。無事、髪も郵送できたらしく、ホッとひと息。
彼女の短髪を見るのは初めてで、チロルにいる間はお話しするのに少し緊張したりした笑

家に帰り、彼女は僕の沢山ある服の中から好きなパジャマを選ぶ。いつも好き勝手選ぶのだが
、今回もなんとも言えずダサいチョイス笑 水色一色の彼女は少し得意げだった。

2022.3.12

16日に物件見学に行くことに
誰かに保証人になってもらうことで、賃貸の契約ができるのでは!そんな事、すっかり頭に無かった。
僕は、収入なんて全然ない為、自分では賃貸の契約はできないと思っていたのだ。
最早僕には普通の物件すら借りることは出来ないのだと、勝手に決めつけていて、誰かとの縁だけで物件を探そうと考えていたのです。つまり、「信頼」だけでなんとか物件を借りることが出来ないかと。今考えると、なんて安易な発想かと思うが…まあ、ということでなんとか3月中に引越しできそうである。

2022.3.14

待ちに待ったかっぱさんとの山登り。
今日は蛾ヶ岳に登ったのであります。標高1279m。かっぱさんは初心者向けの山だから大丈夫です!なんて言っていたけれど、登り始めて二、三分。僕となつは、「これは無理では??」
弱音を吐きながらも、2時間くらいかけてなんとか登頂。
途中、鹿に出会ったり、見たことのない植物を発見したり、山登りはいいねえ〜
頂上で食べる塩むすびは本当に最高でした!
道中、僕となつは木の棒を手に入れては、「ノック方式」で木の実を打ったり、お互いを叩き合ったり。何度かっぱさんを立ち止まらせてしまっただろうか…
なっちゃん、僕ら大切な、大切な友人が出来たね。かっぱさんには何から何までお世話になりっぱなしの一日でした。笑

2022.3.15

物件の情報があり、元々行く予定だった物件の他に、後一件行けることに

そういえばこの間苫米地さんが良いことを言っていて、今日、ふとそのことを思い出した。
確か何かの情報番組でのこと。「私が“道”を間違えた瞬間」というテーマについて話していた。 
彼は一言ズバッと。「いや、本来道って人が通った後にできる跡のことを言うんですよ。つまり、人の通り道ね。だから僕らが道を誤ったり、迷ったりすることはないんですよ。」
確かこんなことを言っていて、僕はずいぶんとその言葉に救われたのだ。
間違いなんてない。人生において、僕らのした選択がそうであるならば、今日くらいは、僕も少し胸を張って生きて行けそうな気がしたのです。

2022.3.16

富士川町に物件を見に行き、住む場所が決まる。色々肩の荷が降りて安心。
本当に、僕はいつも何かしよう!と思い立つと物事があれよあれよと上手く進んでいくのである。様々な方のおかげで、「そうなっている」のは充分に理解しているのだけれど、何か、僕は見えないものに動かされているような気がしてならない。そう、見えないもの。何か大きな力が働いて僕は今回「〜をするに至った。」そんな感じである。
ということで、僕は富士川町に住むことが決まったのです。

2022.3.17

今日から夏芽と青春18きっぷを使って1週間の旅行に行く。
数日前からどこに行くか計画したりしていたが、恐らく計画通りには行かないだろう。そんな旅をしたい。

3月17日〜3月24日の旅行であった。
鈍行で、三重、大阪、広島の順で向かう。

元々、今回の旅に大きな目的は特にはなかった。ただ、4月から始まるお互いの新しい生活の前に、遠くへ行ってみたいね。そんな、ちょっとしたきっかけからだった。旅をすることで、知らない土地に行くことで、お互いにとっての「理想の場所」も見つかったりするといいね、なんてことも話していた。

数日間の旅で、僕らは多くのことを学んだ。
しかし、やはり山梨がいいねえ。と。様々なところに行きながらも、お互い共通して、そんなことを思っていたのには驚いた。

旅中に話したこと
そうだなあ。面白い、素敵な場所を見るにつけ、僕はああ、これでいいんだ。もっとやれー!と、そんな気持ちであった。
夏芽は旅中に将来自分がやりたいことの選択肢が広がったんじゃないかな。それは、僕らが泊まったゲストハウスだったり、訪れた古本屋、見た景色、場所、様々なものの影響があったと思う。
僕はね。夏芽が「ああ、こんなのもあっていいんだな。自分もこういうことができるかも。たかやくんとこんなことを一緒にしてみたい!」そんな言葉を聞いて、僕らが一緒にいた約3年間は、少し報われたような気がしたんだ。僕は、少し許された気がした。なんだかこれからの全てがうまく行くような気がしたんだ。

僕は、旅に出て様々な人と会話するにつけ、何処か少し得意げで、いつもより冷静な自分がいることを発見した。
それに、なんだか自分の思考というものがこれまでと比べて随分と洗練されている?(うーん。なんて言ったらいいだろうか)ように感じた。
福岡正信の本を読んでいたことが関係しているのだろうか。
「人間というものは、何一つ知っているのではない」というたった一つの事実は、深く、深く、僕の胸を抉って離さなかった。「この世には何もないじゃないか」たった一つの真実を知ったあの青年は、どれほどの耐え難き淋しさと共に人生を送ってきたのだろうか。彼は全青春を、一瞬間のうちに捨て去ってしまった。果たして僕に、そんな覚悟があるだろうか。
彼の思想について研究したくて、僕は数週間前に「無」の三部作を購入した。恐らく僕の求めている答えはここにある。

広島平和記念資料館でのこと。
突然、観客の中から赤ん坊の泣き声が聴こえてくる。僕はその声が、当時の「広島の声」そのものに聴こえてしまって、ひどく耐え難い時間になる。数々の恐ろしく悲惨な現実を知る。僕は言葉を失った。あの空間では、ただ、言葉を失ってしまった。

「本と自由」に行ったこと
店に入ると共に泥酔した店主が抱きついてくる。
「お〜良く来たね〜」
店内では何やらお客さんが歌ったり踊ったりしている。
最高の空間。僕もなつも歌ったりギター弾いたりする。そこには上手いも下手もない。言葉は、必要なかった。
「みえるもの、みえないもの」酔っ払いながら彼が放ったこの言葉を僕らはきっと忘れないだろう。

古本屋 紙片の店主と話したこと
・現在の作家さんの本が売れてお金がその人のところに入ること、経済が回ること
そこにお金が流れることに、今は違和感なくできている
・本を買ってもらうことでそのひとの日常に食い込むことができる
・僕は図書館の話をして、中古も、新品も、図書館も、全部やったら面白いと思った

約6泊して、くたくたの中での帰りの鈍行は結構えらかった…丸一日かけて広島から山梨に帰りました。中央線の、安心できること、できること。やっぱり僕は家が大好きです。なっちゃんも本当にお疲れ様ー!

2022.3.25

帰宅後、13時くらいまでぐっすり眠っただろうか。
今日は夏芽の合格発表の日。お互い起きて、見てみよっかとネットで検索。
無事合格でこの笑顔!よかったなあ。本当によかった。今日はぐっすりと眠れるね。なつ、本当にお疲れ様。

2022.3.29

住む場所が決まった。畑も借りられる場所が見つかった。すぐにでも行動できる。それなのに何故だろう?漠然とした不安が残る。それは恐らく引っ越しや野菜の収穫体験では得られないものなのだと確信している。
やはり「ひと」なのだろうか?マルシェの時に感じた「ひと」への意識は僕の心が忘れていないようだ。
つまり、ここを無視して僕のやりたいことはできない。うん、おっけいだよ。ちゃんと聴いてる。自分の声が聴こえるよ。今は出来ることを少しずつやっていこう。ちゃんと出来てる。

夏芽は、体調が良くなって(少し体調を崩していたのだ)家に帰った。あと二日で彼女も社会人。僕は高校卒業してからだから、もう四年目になるんだな。四年経って僕は、何一つやり遂げたことなんてないや。いつも人に頼ってばかり。

そういえばこの間こう思ったんだ。ああ、もうすぐ3月も終わるなって。いつもは自分の年齢が変わることを人一倍意識していたんだけれど、今年はそうでもなかった。そんな風にひと月が経つように、僕も少しずつ年を重ねていく。あっという間に三十歳。ふーらふらした三十歳。嫌だなあ。お金はなくても、生活面の自給だけは確実に出来ていてくれよなあ。ちゃんと、人にやさしくね。自分のことばかり大切にしちゃダメよ。おっと、早く電気工事士の資格申請しなくっちゃ

2022.3.30

昨日は自分が食べたい野菜、育てたい野菜などのリストを見直し、「野口の種」のオンラインショップをみたりした。

僕に本当に畑が出来るんだろうか?
商売をするわけではないから、そんなに思い詰める必要はないんだけれど、やはり何かを所有(こんな言い方は好きじゃないけれど)してそこでやっていくというのは初めてのことだから少し緊張しているのかもしれない。
そういったことも、やりながら少しずつわかってくるのだと思うけれど。
マルクスについて少し勉強。
本当に対等な関係、とは何だろう?
結局僕が追い求めているものも「それ」だろう。

2022.3.31

明日、僕は富士川町のアパートの大家さんに挨拶をしに行く。夏芽は明日から社会人である。お互いに新しい生活が始まろうとしている。何もかもが春である。山梨の、桃の花はやはり美しい。

僕は、僕の生活をようやく実現出来るんだ。これは喜ぶべきことじゃないか。少しずつ、自分の思う理想に近づいていきたい。

・疎外された労働は嫌
・「お金の為だけ」に動く行為は一切しないことを心に決めた

今の僕が考える理想。それは僕が「寂しさ」から脱出すること。僕が過ごした数々の、あの暖かい場所を想像すること。自分はそこから離れていないか。難しいことじゃない。「小さな僕」が、いつだって僕をみているよ。

どうして今まで自分の生活を実践しなかったのだろうか。恐らく出来なかったのだと思う。僕はあまりにもそれを完璧に仕上げてしまうため。たぶんそのことで何かが変わってしまうのが怖かったんだ。いよいよ僕は成長の時を迎えるだろう。(自分でこんなことを言うのはとても恥ずかしいな笑) けれど、本当にそうなんだ。今まで目を背けていたことを、これからはちゃんとひとつひとつ思いだしながら向き合っていくんだから。僕は恐らく果てしない理想を追い求めるだろう。しかしそれは僕にしか出来ないことだということが、最近では少しずつはっきりしてきたんだ。僕にしか出来ないこと。ああ、恥ずかしい。僕は今、未来の自分へ手紙を書いているんだよ。おい、大丈夫かい?ちょっと歳をとった尭也よ。情けないこと言ってるんじゃないよ。お前が見てきた景色をちゃんと思いだしてごらん。先のことばかり考えて楽しくなったり、悲しくなったりするお前は、時々、意識的に今あるものを数えたり、見返したりしなくちゃダメだよ。じいじのことを、そろそろ思い出せたかい?21の僕は、未だに18の頃で止まっている。なつとは、変わらず楽しくやってる?母さんや父さんは仲良くやってるかな。京也はどうだろう?山梨に帰ってきているかな。おうおう、終わらないぜこんなことやってると笑
まあ、とにかく元気にやってくれよ。21歳の僕が好きだったものは、「 」思いだせる?ユーモアを忘れずにね。何事も、楽しくなきゃね。周りの人は皆んな笑ってる?苦しかったら、そんな事はすぐ辞めちゃいな。ひとまず、今の僕はそんな感じでやってるから。安心して。皆んな元気にやってる。だって、僕は今 未来に対してモーレツに希望を持っているんだから!

馬渕尭也

Author 馬渕尭也

2001年生まれ。山梨市出身。高校時代から周囲の人たちのありのままの姿や風景をフィルムカメラで撮っている。 高校卒業後台湾へ留学。帰国後の現在は、農業をしたり、地域の読書会に参加したりと、様々な場所をウロウロしながら生活というものを日々模索している。好きな作家は深沢七郎 Facebook / Instagram

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