みみはわす

By 2017.12.03FEATURE

11月15日、鳥取県大山の森から音楽家OLAibiさんがご家族で、新譜「みみはわす」を携えて甲府の五味醤油の150年続く味噌蔵でのライブのためにご来甲してくれました。OLAibiの愛さんはデザイナーの旦那さんと息子の空南(あなん)さんと共に大山の森に家族の手で建てた小屋に住んでいます。HUTというその場のこと、ご家族のことは、家族と一年誌『家族』という本を読んでその暮らしぶりを見ていました。そこから伝わる家族の断片は、それぞれが自立しつつ、協力しつつ、1人の人間として接しているような深い関係性が見えました。

OLAibiの名義になる前から聞いていた愛さんの音楽。今、いったいどんな音楽を奏でてくれるのかとても楽しみでした。そして息子さんの空南さんはANAN coffeeとして、コーヒーを淹れるお店を構えています。いつか出会って飲んでみたいと思っていたので、まさか山梨で念願叶うとは。空南さん自ら七輪を使い炭火で自分で焙煎しているそう。この日はブラジルとエチオピアがお店に並びました。まだ10代の半ば。これからどんな大人になるんだろう。



この日は近所の豊鮨のケータリングも。美味しいお菓子を“ふじの間”としても出していて、空南さんのコーヒーとの相性も抜群。撮り忘れてしまいましたが豊鮨のプレートごはんもとても美味しかったです。ライブの会場の装飾は今回豊鮨の若き後継、若月大地くんが担当しています。彼の所蔵する古道具や灯り、古材などを使って、場に息吹が吹き込まれたようでした。もちろん蔵の中でこれだけ多くの人が集まって音楽を聞くということは、150年の歴史の中でもなかったことでしょう。
そもそもこの音楽会は、愛さんとも親交のある甲府の音楽家・田辺玄さんが企画し、ライブ会場を探すところから始まりました。五味醤油の蔵の改装の時期とも重なり、壊してできたスペースがOLAibiさんの音楽にあうと一目見てここに決まったそう。近くに場や人の繋がりができているからこそ、それぞれの持てるチカラが顕在化しているからこそ、身近な繋がりを最大限に活かすことができるのだなと感じました。




ライブをすることになった場所にはしばらく使っていなかった麹室がありました。蔵の改装で、そこを全て壊したらわりと大きなスペースができたそう。今回はそこの場所を借りてのライブ。場所にはしっかりと時間の経過が刻まれていました。壁や床や木材に、そしてそれらが作用して織りなす空間に。時間という概念は、人がどうあがいても新しく付随させることのできない要素。役割というにはまた違っているのかもしれないですが、そこで行われていた人や自然のいとなみをしっかりと記憶する場になっていました。
灯は優しく全てを受け入れる道しるべのように僕らを会場に誘ってくれました。


OLAibiさんの音楽は、この蔵にいつも響いていたかのように聴こえました。時間軸に縛られていない音色。暗闇でみみをはわすと聴こえてくる、聞いている人それぞれの物語が無数に交わり、そして音色はいつのまにか耳からは消え、脳内に残響しているような。
演奏していた愛さんも余韻がすごかったと言っていたと後から聞きました。
最後の曲で、田辺玄さんと合奏。空にいる人を想う歌。

大きなライブハウスがなくても、こうやって小さな場が関わりの中で作られて、それが繋がっていくのが地方の面白いところなのかもしれません。たまにご褒美のようにこんな素敵な場で音楽が聞けるからこそ、なんてことのない日常も頑張れます。
音はいつでも、どこにでも鳴っています。夜、静かなところで1人でみみはわすのもいいのかもしれないなあと思いました。
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