【ON READING/読む時間】 #001「愉しい孤独」

By 2017.12.10COLUMN

本を読む人から売る人になって、そろそろ15年になる。
小さい頃から本が好きだったのは、ひとりが嫌いじゃなかったからだ。
わりと体が弱かった年子の弟にかまってばかりだった母親に、長女としていいところを見せれば褒められると思って、ひとりでも大丈夫な子になろうとした。私は強い子どもでいたかった。
泣くなんて論外、かといっていつもニコニコしてるのもうまいことできなかった。
私がさみしくないようになのか、賢く育って欲しかったからなのかはわからないけれど、物心ついて気づいたら、私は様々な本に囲まれていた。

小さい頃に好きだったのは、おもしろおかしく勢いのあるお話よりも、終わりが切なかったり淡々とした物語。
最後に海の泡になって消えてゆく人魚姫は、ハッピーエンドの白雪姫よりずっと愛おしいと思ったし、穴を掘って、そこから空を見上げる少年が主人公の谷川俊太郎さんの絵本「あな」も、彼が自分だけの世界を手に入れてゆく静かな描写が大好きだった。

友達といるのも好きだったけれど、子どもには子どもなりのルールもあって、時々めんどうだなと思うことも正直あった。その点「ひとり」というのは気が楽だ。おまけに読書していれば、ちょうどいい具合に誰も何も言ってこない。

最近は世間では繋がることが孤独よりも良しとされ、ともすれば「ひとり」はネガティブな状態だと疎まれる。
「ひとり」はそんなに良くないことなんだろうか?

本の世界に限っていえば、朗読会でない限り本を手にしてる時、私たちは基本的にひとりだ。
ただページをめくるだけで、様々な場所へ旅したり、他人の恋愛を生きてみたり、自分の奥にある純粋な気持ちに出会ったり、そこは誰にも邪魔されることのない、とても自由な世界だ。

そんな「自由で愉しい孤独」を過ごす贅沢を、近ごろの私たちはいろんなことと引き換えに、どんどん手放してしまっているのかもしれない。

[BOOK LIST]
「ON READING」(読む時間)/アンドレ・ケルテス
アンドレ・ケルテスが、人々が読む風景を集めた写真集。
日本語版は巻頭にある谷川俊太郎さんの詩が、この一冊に立体的な広がりを与えてくれています。

石垣純子

Author 石垣純子

mountain bookcase 長野県出身。移動本屋mountain bookcaseと甲府の春光堂書店員。 石と旅好き。 Facebook / Instagram

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